◆スコッツマンを読む会 活動報告 2023年◆
2023年5月6日(土) 14:00〜
1)2023年5月20日付
Kenzaburō Ōe: a writer of real humanity and the real Japan
「大江健三郎さん:真のヒューマニティと真の日本の作家」

3月3日の、日本の作家でありノーベル賞受賞者である大江健三郎さんの死(享年88歳)は、彼の読者の心に深い傷跡を残す。しかし、そのもっとも力強い声であり批評家のひとりを失って、日本人社会にも深い傷跡を残す。
ノーベル文学受賞者大江健三郎さんは
2006年中国江蘇省の南京大虐殺記念館を訪れる
大江さんは文学の巨人であった。日本では政府によって、オープンな政治討論や参加が反対されたり、メディアがしばしば影響を受ける。大江さんは政治に参加した、戦後最後の日本人作家であった。自国についての鋭く容赦のない論評において、政府の国家主義的政策、危険な原子力発電所の存在や天皇制を含めて、民主主義や人権を損なうもろもろの要素を批判した。
彼は天皇から授与される名誉の文化勲章を拒否さえした。彼のオープンな民主的な関わり合いにより、右翼からの暴力的脅威にさらされたり、裁判にかけられたこともあった。
紙面の内外において、彼は、日本に対する強い注意深い関心と、フランス哲学(彼の卒業論文はサルトルであった)からT. S. エリオットやダンテ・アラギエリのような古今の作家に至る、西洋の思想と表現の深い知識とを結び付けた。これによって、その作品がアイデンティティ、不正、故国の探求といった世界的な問題に共鳴する、数少ない日本の知識人のひとりとなった。

戦後日本を勇気をもって描く

1935年生まれの大江さんは、20代で作品を発表した。彼の初期の作品は力のない個人と権力との関係を探った。彼の最初の短編「奇妙な仕事」(1957)では、学生たちは、医学部が実験に使う150匹の犬の殺しを手伝うために、雇われる。学生たちの困った状況は、不気味にも動物の状況に似て、彼自身の戦後の若者たちに語りかける。
1950年代の日本は太平洋戦争とそれに続く米軍の占領による、国家主義的な集団的イデオロギーの敗北で、強力な倫理的政治的モデルを欠いていた。その短編の若者たちは、大江さんの世代のように、明確なアイデンティティと目的を失って、自分たちはその代表とは感じていない不条理なシステムにもてあそばれている。大江さんの中編『セヴンティーン』(1961)は彼の初編の究極の結果として読むことができる。この作品における権利を奪われた若者は、急成長する帝国主義的国家主義的団体の陶酔的暴力行為に、自己を捧げることに慰めを見出す。
大江さんのキャリアは、日本が自らに向かい合って、その戦争犯罪を認め、アジアにおけるその位置を確認することのできない(確認することをしたくない)という内省によって形作られた。1994年ノーベル賞が授与されるや、日本における「あいまいさ」を「現代にはびこる慢性病」と言った。彼の講演において、1968年彼より前にノーベル賞を受賞した唯一の日本人作家、川端康成氏のノーベル賞の講演「美しい日本の私――その序説」に言及した。大江さんのタイトルは「あいまいな日本の私」であった。
川端氏の講演の「美しい」に呼応して「あいまいな」という言葉を用いて、国外のその文化的イメージを支配してきた日本の審美的表現から自分の作品の距離を置くことで、世界的な日本文学の歴史の中に自らを置いた。この表現は禅宗や茶道や(とりわけ)束の間の美の穏やかな理解からできている国のものであった。

ヒューマニティの多様性

その国を自分の見たままに正直に表現するとともに、あいまいで沈黙した日本人のアイデンティティにも重要性を与える。『飼育』(1958)は作家志望者が熱望する芥川賞を獲得し、これで彼は文壇デビューをした。 この物語は島の村のひとりの日本の少年と黒人の捕虜との出会いを描く。
日本では、都会人は田舎の背景――大江さんが本島の南の周縁の最小の島、四国で成長して受け継いだ背景――を持つ人を差別する可能性がある。この物語では、町の人びとは村人たちを「汚い獣のように」取り扱い、今度は村人たちがその黒人の捕虜を同じようにいう。『飼育』は、権力の乱用とそれを誰もがいかに行うことができるかについての不快な物語である。 日本人のアイデンティティの多様性のこういった探索は、彼の作品における空間への考察と交差し続けた。『万延元年のフットボール』(1967)や『水死』(2009)は、周縁部の共同体の物語と民話や代官に対する祖先の蜂起とを関連付けている。この二つの小説は、周縁部の日本人の遺産と記憶とを強調する。また大江さんの作品における都会の窒息するような腐敗に対して、田舎は決して牧歌的な素朴さではないことをこの二作品は示している。それどころか、田舎はまだ暴力と差別の充満する有機的選択肢であるため、それでも活気に満ちてリアルである。
大江さんの作品において、人間性のすべての面――光と闇、グロテスクと残酷――の厳密な描写は、一見相反する要素の和合の可能性を提示する。大江さんは自分の文学を、人間の苦しみを表現し、癒しの可能性を探るヒューマニスティックな努力と見た。誠実に描こうとして、自分の個人的な危機から逃げることは決してなかった。彼は障害児の息子さん、光さんについてよく書いた。それは小説『個人的な体験』(1964)や他の多くの作品を生み出した。
生と死の共存を受け入れることで、彼は次のエッセイ集『ヒロシマ・ノート』(1965)を書いた。そこで彼は原爆の犠牲者の政治的道具化について考察し、彼らの沈黙に対する権利を尊重する必要性を強調する。奮闘する父親としての彼の姿は、原子時代の、人の造り出す災害の影響を受けた人びとについての沈思黙考と重なり合う。原子時代では、絶滅は突然やってくることがある。 大江さんにとって、その規模にかかわらず、それは常に個人的な問題であった。
今、大江さんは彼の愛する故郷の森の木々の間におそらく「行かれて」いるだろう。伝説によると、魂は肉体を離れたのち森に帰るのである。残されたわれわれにとって、彼の記憶が日本と生活の、彼の想像力に富むがリアルな描写の(再)発見につながることが望ましい。その描写は弁解の余地がないほどとても人間的であるので、きわめて力強い。
2023年4月1日(土) 14:00〜
1)2023年2月22日付
Analysis: figures lay bare how the cost-of-living crisis has corroded Scots' personal finances
「分析:生活費の高騰がどんなにかスコットランド人の個人財政を台無しにしたかを数字はむき出しにする」

あなたの真の富の尺度は、もしあなたがすべてのお金を失ったなら、あなたはどれくらいの価値があるかと言われてきている。しかしながら、大きく値上がりして、家計に重くのしかかるエネルギー、食品、住宅費を含めた、生活費高騰の真っただ中で、そのような仮説は個人財政の状況が十分でないと感じるスコットランド人には、多分貴重ではあるが小さな慰めでしかない。このことは最近の財務健全性指数で資産管理者St. James’s Place (SJP)(※1)のレポートで分かったもののひとつである。説明によると、財務健全性指数レポートは英国の富と幸福度を測定し、財産への圧力に対応するに12の地域がどんなに余裕があるのかとか圧力を跳ね返す力があるのかを感じるかを考慮に入れている。
フッツイーワンハンドレッド(※2)は、経済ビジネス研究センター(※3)と共同で開発したその最新の研究バージョンは、英国中の経済格差の程度を浮き彫りにしている。そして、悲しいことにスコットランドは見出しの財政健全性指数におけるスコアの評価が2021年の53.2%から2022年の41%へと最も急激な落ち込み示している。さらに、もっとも最近の数字では、そのリストのトップにある南東イングランドの77.2%の半分の少し上で、しかもそのリストの最後でかなり寂しい11.4%の北東イングランドのそれのほぼ4倍である。
この指数は3つの明確な柱に分解される。つまり、個人個人が感じ取れる経済的幸福、富、そして富の源泉である。そしてこれらの最初のもの(個人が感じ取れる経済的幸福)を見て、すべての地域の大半に劣化がみられるとSJPは言った。
報告書によると、2021年の50.0%から上昇して
スコットランド人の約2/3は経済的に十分だと感じていない。
この指標のためにスコットランドを拡大して上空を飛んでみると景色が痛ましいほど劣化しているとSJP社は付け加えた。同社は1億4千万ポンド以上の運用資産とエジンバラ、グラスゴー、アバディーンを含むスコットランドに支店網を持っている。最後の指数(3番目)でスコットランドがこのランキングでトップであったのであるが、今回は、昨年と比較して61%もの目立った落ち込みがみられ、全体の富と富の源泉となる柱の中では中間に位置していたにもかかわらず、ヨークシャー、ハンバー&北東イングランドに次ぐ、今や下から3番目です。この落ち込みは、ほとんどは、財政的制約が生活の質に影響するのを人々がどのように感じるかという点で91.8ポイント落ちたことによる。

更なる落ち込み

裕福だと感じないスコットランド人は2021年の79.1%から69.6%へ落ち込んでおり、パンデミックのちょうど前には、家庭で最も裕福な10%の典型的な家庭は総資産で1.7百万ポンドを持つ一方、もっとも貧しい10番目の典型的な家庭は、財産を持たないかあるいは私的年金貯蓄しか持たない傾向にあるグループだが、その資産は7,600ポンドしかなかった、ということをスコットランド政府のデータが示した。
適切にフィナンシャルプランを持ち、フィナンシャルアドバイスを受けているスコットランド人が増加していることは心強いと
SJPのアレクサンドラ・ロイドンは言う。
財政的な回復力とは、収入の突然の落ち込みや支出のやむ得ない増加に直面した時金銭面で対処する能力と定義される。英国の回答者の1/3以上は、自分たちをそのような回復力をもたないし、財政的危機に対処するためには2倍以上の富が必要といい、そして回答者の3/5は財政的に十分でないと感じるといった。
the Financial Fairness Trust(※4)の最近の研究では、次のように示された。生活費高騰の始まりから、スコットランド人は光熱費を確保することが厳しいと分かっており(現役世帯の53%の報告)、質を落とした食事をとる(同46%):社交的でないと感じる(同38%)、3つの測定値すべてに関して英国のほかの地域の家庭より悪くなっている。
アレクサンドラ・ロイドン、SJPのパートナーエンゲイジメント及びコンサルティングディレクターは言った。「生活費の高騰で、財政上十分でないと感じるスコットランドの人々の増加していることに驚きはない。これがおそらく幸福に対する彼らの認識が今年もまた落ち込んでいる理由です。その上、スコットランドの住宅価格がウエールズ、イングランド、北アイルランドと比較して2022年は最も低い伸びになったと言われている。このことは財務の健全性に波及効果があるでしょう。

自宅の所有権

北東イングランドと同様スコットランドは主たる富の源泉である住宅価格と公式住宅価格データともに見ると最低の測定値を記録していた。最近の英国住宅価格指数は国家統計局及びHM土地登記所(※5)で公表されているが、そこではスコットランドの平均住宅価格は12月に187,200ポンドであった。11月よりも2.9%低いが12か月前よりは5.7%高い。
しかしながら、スコットランド人は彼らの財政を把握・理解するためにさらに行動している。SJPの報告では10人のうち4人は財政計画を持っていて、2021年の35%から上昇し、英国平均の34%を上回っている。これは(英国の数字は)毎年4%ずつダウンしていたのだ。そしてスコットランドはフィナンシャルアドバイスの受け入れに関してトップにランクされた。困難な状況にもかかわらず適切にフィナンシャルプランを持ち、フィナンシャルアドバイスを受けるスコットランド人が増えるのは心強いことである、とロイドンは言った。さらに彼女は二桁のインフレ、高金利、「激動の」市場の影響は全体として次の数か月悪影響を受け続けるだろうことを確信している。困難の時期に財政状況をコントロールする計画を持つことは短期的にも長期的にも本当に理にかなっている。それはあなたのお金がどこに行くのか理解するため月々の予算を適切に立てることであり、あるいはあなたが本当に購入する必要があるかどうかをあなた自身に問うことであるが、それは、税控除と軽減措置を最大限に活用するため支出を抑えまたは貯蓄を確認するのを毎日継続するのに役立つだろう。これはすべてあなたの財政上のバランスと、あなたがあなたの財政状況をどのように感じているかに対する本当の違いを理解することができます。
(※1)Wealth-manager St.James’s Place
英国の投資運用会社、本社はグロスターシャー州サイレンセスターにある100を超えるオフィスがありアドバイザー、ファンドマネージャー、生命保険事業を手掛ける。ロンドン取引所に上場FTSE100の構成銘柄。

(※2)The FTSE100 company
フッツイーワンハンドレッド ロンドン証券取引所に上場する銘柄のうち時価総額上位100銘柄で構成される。この100銘柄で、ロンドン証券取引所の時価総額の約8割を占める。

(※3)The Centre of Economics and Business Reseach(Cebr)
ロンドンに拠点を置く経済コンサルタント会社 民間企業や公的機関に経済予測と分析を提供している。

(※4)The Financial Fairness Trust
スコットランドに登録されている慈善団体。

(※5)The Office for National Statistics and HM Land Registry
国家統計局及びHM土地登記所。
2023年3月4日(土) 14:00〜
1)2023年2月1日付
Ian Rankin on the new John Rebus stage thriller that may never see the light of day in Edinburgh
「イアン・ランキン(※1)、エジンバラでは日の目を見ることは決してないかもしれない新しいジョン・リーバス(※2)のミステリードラマについて」

作者とならんで有名なスコットランド人の俳優がジョン・リーバスを演じ、リーバスが殺人事件に巻き込まれる魅力的な新しいイアン・ランキンのスリラーは多くの人にとって夜に劇場で過ごす完璧な方法のようだ。
エジンバラのニュータウンにある豪華なフラットでディナーパーティーが暗転し、引退した探偵が自ら舞台中央に立つことになる。しかし、エジンバラを拠点とする作家ランキンは、彼が書いた殺人ミステリーがかれのホームタウンであるエジンバラで日の目を見るかどうかわからないことを認めている。ランキンはパンデミックによって劇場が余儀なく閉鎖されているとき、劇場がパンデミックから抜け出すのを助けるためこの劇のアイディアを思いついた。すべてのアクションがダイニングルーム一室で展開され、そこでは、親しい人達を集めた女主人が邸宅内の殺人事件を解決するよう客たちに挑戦する食後のゲームを設定した。女性弁護士の付き添いとして招待されたリーバスは、ディナーパーティー中に死体が発見されたとき、彼の刑事としてのスキルを復活させた。
ミステリー作家イアン・ランキン
写真:ジェーンバーロウ/PAワイヤー
「リーバス:悪意と呼ばれるゲーム」は今週イーストロンドンのホーンチャーチのクイーンズシアター(※3)で初演される。これはリーバスが舞台デビュー(※4)してからほぼ5年後であり、このときにはチャールズ・ローソンその後ロン・ドナチーが主役を演じた。「刑事タガート」(※5)に出演したジョン・ミッチーが目下、リーバスを初めて演じる準備をしている。
「ホルビーシティー」(※6)でガイ・セルフを演じた
ジョン・ミッチー
写真:BBC
ランキンは監督のロビン・ルフェーヴル、プロデューサーのダニエル・シューマンとリー・ディーンと新しい劇のためにユニットを組んでいる。ランキンは言った:「劇場を再開するとき彼らは資金繰りが苦しいだろう、それで多くの俳優や多くの場面転換を望まないだろうし、飲み物を提供するための幕間も欲しいだろう。このことは私に、一種の応接室ミステリーのアイデアを与えてくれた。エジンバラのニュータウンで行われる豪華なディナーパーティーで、出席者6人のうち男性の登場人物は3人、女性の登場人物が3人、女性は皆、同じジムに通うことでお互いを知っているが、男性はそうではない。リーバスの知人の女性弁護士は、彼を同伴者として連れて行き、他の2人の女性はそれぞれパートナーを連れてきた。ゲーム内でゲームをほぼ持つというアイデアが私はとても気に入った。解決すべきパズルは2つあり、1つは夕食後のゲームでの架空の殺人であり、もう1つは死体が現れる現実の殺人だ」
ランキンの3番目の舞台劇である「リーバス:悪意と呼ばれるゲーム」は、彼のデビュー作であるDark Roadから10年後に上演される予定だ。Dark Roadはエジンバラを背景にしたスリラーで、リーバスを主人公にした小説とは関係ない。満員札止めの観客をエジンバラで最もよく知られている劇場の一つであるロイヤルライシウム劇場(※7)に引き寄せた。

ランキンはいった、「私が書いた他の劇から多くのことを学んだ。たとえば登場人物は何人まで、場面の転換は何回まで許容できるか、人々が出入りできるのに十分なドアをつけるとかだ。私が最初に書いた劇にはたくさん特殊効果があった。つまり、毎晩失敗の可能性のあるものがたくさんあった。「悪意と呼ばれるゲーム」は非常にシンプルな舞台構成だ。だから、劇場が上演できると思ってくれることを願っている。出演者たちは部屋を出ることはない。場面転換はまったくない。登場人物が少ない、費用を抑えた作品だ。前回のリーバスの劇についてすべての劇場が気づいたもう一つのことは、リーバスのファンが休憩時にアルコールを飲みたがるということだった。、劇場は、通常は劇場に行かない人々がそれを見に来ていることに本当に気づいた。観客はそれが犯罪小説だったから、リーバスものだったから観にきたのであり、チェーホフだからではなかった」 ランキンの前作はイギリス各地を広く巡回した。しかし、ランキンとリーバスのファンは、新しい公演がいつ行われるか、また行われるかどうかを確認するのを待たねばならない。他の劇場での公演日がまだ確認されていないので。「リーバス:悪意と呼ばれるゲーム」は、スコットランドの劇場の不確実性を背景にロンドンで初日を迎えようとしている。リーバスのスリラーの最後の作品が上演されたエジンバラのキングス・シアター(※8)は閉鎖され、改修を待っているが、予算がほぼ9百万ポンドを超えている。ロイヤルライシアム劇場は、経済危機を乗り切るためにプログラムを削減しなければならなかったことを認めている。

ランキンは語った。「私はそれを見るのを楽しみにしている。巡回上演を期待しているが、劇場は今とても慎重になっている。プロデューサーは、以前のリーバスの劇で起こったように、本格的なツアーを検討するだろうが、それはとにかく劇場の同意を得ることだ。劇場はこの作品がどのように受け取られるかを見るために態度を控えていて、レビューが出て、座席が十分に埋まるかどうかがわかるのをまっているように私には思える。劇場のような閉鎖的な空間に戻るのをためらう傾向は、特に特定の年齢の人々にある。しかし、状況は間違いなく緩やかになってきでおり、人々は警戒しなくなっている。エジンバラの誰かがそれに賭けてくれることを大いに期待している。エジンバラでは他のどこよりも確実なことだと思うけれど、どれも私のコントロール下にない。私はただ待って見ていなければならない」
ランキンは、この劇は彼のベストセラー小説とは少し異なる「宇宙」に設定されていると言い、リーバスがごく最近引退した「後期のRebus」と説明している。「この劇は一種の時代を超越した世界に設定されているので、あなたがこれらの登場人物と一緒に劇場にいるとき、あなたは彼らの世界と彼らの時間枠にいてほしい。夕食のテーブルの周りに座っている誰もが、隠している秘密を持っている。これは心理的なスリラーで、この中でこれらすべての登場人物がある段階で秘密を暴かれ、解かれない謎の多くがリーバスによって解かれる」
ジョン・ミッチー、レベッカ・チャールズ、ビリー・ハートマン、エミリー・ジョイス、フォーブス・マッソン、エマ・ノアクスが新しい舞台劇「リーバス:悪意と呼ばれるゲーム」に出演。
(※1)イアン・ランキン(1960−)
スコットランド出身の推理作家。 代表作は『リーバス警部』シリーズ。

(※2)ジョン・リーバス
ランキンのリーバス警部シリーズの主人公。エジンバラのセントレナーズ署の刑事。

(※3)ホーンチャーチのクイーンズシアター
有名なピカデリーサーカスにあるクイーンズシアターではなく、イ―ストロンドンにある映画館を改造した劇場。1953年(エリザベスU戴冠の年)に開館したのでこの名になった。507席。

(※4)Rebus
Long Shadows 2018年9月。

(※5)刑事タガード
グラスゴーを舞台に叩き上げの刑事タガートが主人公の本格ミステリードラマ。1985年に放送がはじまり、2010年までに27シリーズが放映された。ジョン・ミッチーは1995年から2010年まで出演している。

(※6)ホルビーシティ
1999年から2022年までBBCOneで放映された医療ドラマ。`

(※7)ロイヤルライシウム劇場
1883年創建。658席。

(※8)キングス・シアター
創建1906年。1350席。
2023年2月4日(土) 14:00〜
1)2023年1月6日付
Price Harry book: Ex-colonel Tim Collins says Harry has now turned against his ‘other family, the military’
「ハリー王子の本:元大佐のティム・コリンズは、ハリー王子が今や彼の「別の家族である軍隊」に背をむけたと語っている」

サセックス公爵がアフガニスタンで25人を殺害したと公表したことを批判している人々の中に英国陸軍退役大佐、タリバンの上級指導者、元英国国家安全保障顧問などがいる。 イラクで戦闘前に行った演説でよく知られるティム・コリンズ大佐(※1)は、ハリーは今や彼の「別の家族である軍隊」に背をむけたと述べた アフガニスタンのタリバン指導者であるアナス・ハッカニは、公爵が殺した人々を「チェスプレーヤー」と表現したことで彼を非難した。元国家安全保障顧問のダロック卿は、ハリーがそれらの詳細を明らかに「しないように忠告しただろう」と言ったが、一方元特殊部隊員のベン・マクビーンは王子に「黙っていろ」と言った。
サセックス公爵は、アフガニスタンで25人を殺害したことを明らかにしたことで、彼の「別の家族である軍隊」に背を向けた、と引退したイギリス陸軍大佐は言った。

公爵は物議を醸している回想録「スペア」で、彼がアフガニスタンにいた期間について書いた結果、激しい反発に直面することになる。ハリーは、2012年から2013年にかけての最前線での2回目の兵役期間中の6回の出撃飛行の結果、「人を殺した」が、それを誇りに思ってもいないし恥じてもいないと書いている。スペインの書店から回想録のスペイン語の翻訳本を入手したテレグラフ(オンライン)は、ハリーが殺した人々を人としてではなく、盤面から外された「チェスの駒」と考えていたと語っていると報告した。「ですから、私が殺した人数は25です。私を満足で満たす数字ではありませんが、当惑させることもありません」と彼は書いた。

しかし、コリンズ大佐は、ハリーが暴露したことを批判し、これを「悲劇的な金儲け詐欺」と呼んだ。「彼が言っている中で、アフガニスタンで25人を殺害したと言い張っています。陸軍ではこのように行動しないのです。そのうえそれは私たちはこのように考えたりしないのです。コリンズ大佐は、「ハリーは今、かつて彼を受け入れた別の家族、軍隊に背を向け、彼の生まれた家族を激しく非難しました」と付け加えた。彼はまた、ハリーが英国と連邦の人々にとって「異質な」道をたどったと非難し、公爵は「米国のアイデンティティ政治を追求し、そういうものが存在しない場所に人種差別的な発言をしている」と付け加えた。「彼はどんな道を選んだのだろうか?結局、彼が必要としない富を追求して失望と悲惨さだけを、そして彼がひどく必要としている家族と同志からの愛を追求して拒絶を手にしたのです」

ハッカニ氏はツイートしました。「ハリーさん!あなたが殺したのはチェスの駒ではなく、人間でした。彼らには彼らの帰りを待っている家族がいました。「アフガニスタン人の殺害者の中で、良心を明らかにし、戦争犯罪を自白するあなたのような良識を持っている人は多くありません。真実はあなたが言ったことです。私たちの無実の人々は、あなたの国の兵士、軍事的および政治的指導者にとってチェスの駒でした。それでも、あなたは白と黒の「正方形」の「ゲーム」で敗北しました。「(国際刑事裁判所が)あなたを召喚したり、人権活動家があなたを非難したりするとは思っていません。なぜならば彼らにはあなたの言ったことが聞こえないし、あなたの姿が見えないからです。しかし、これらの残虐行為が人類の歴史の中で記憶されるといいなと思います」
ダロック卿はスカイニュースに、ハリーのコメントの後に軍事専門家が提起した安全保障上の懸念を「わずかに」共有したと語った。「アフガニスタンで戦ったすべての人々を尊重しなければなりません」と彼は言った。
「私は国家安全保障顧問だったときに何度もそこに行きました。本当に厳しい環境です、本当に危険な戦争でした、私たちは500人以上のイギリス軍人を失いました。私はそこで戦ったすべての人々を尊敬し、感謝しています。個人的に私が王子に助言していたら、彼がはまり込んだような詳細に対しては反対の忠告をしたでしょう。しかし、それは今公表されています。私はそれが正義の戦争だったと信じています、そしてそれ故に彼がしていたことを彼自身にどのように正当化したかについて書いたことは、私はそれを理解し、受け入れることができます。詳細に関しては、個人的には言及しませんでしたが、今しています」

2008年にアフガニスタンでイギリス海兵隊に所属していた片腕と片脚を失い、いくつかのイベントで会った後ハリーから「本当のヒーロー」と評されたマクビーン氏は、ツイートして「ハリー王子、愛してるよ。でも黙っていろよ。(本は)あんたと付き合いのあった人をおどろかせているよ」といった。「もし誰かよい人がいたら今頃までに彼に止めるようにいっていただろうに」
国防省のスポークスマンは「セキュリティ上の理由」のために作戦の詳細についてコメントしないと述べた。ハリーは、2013年初め、兵役期間の最後のころ、人を殺したことを明らかにして批判された。当時28歳の彼はメディアに、敵を「ゲームから外し」、兵士は「命を救うために命を奪う」と語った。
サセックス公爵は、彼の回想録から暴露が続いた時、彼の身体的暴行疑惑の最中に皇太子がどれほど「激しく怒った」かを、別の章で説明している。ハリーは、王室との和解をまだ望んでいると主張しているが、最初に何らかの説明責任が必要であると警告した。彼は日曜日にノーカットで放映されるITV(※2)のトム・ブラッドビー(※3)とのインタビューで、2019年の猛烈な対立の間にウィリアムが彼を床にたたきのめしたという彼の主張について詳細を語った。
「私は何年もの間抱いていた激しい怒りについて話します、そして私は彼の中にこの激しい怒りを見ました」とハリーは言った。「彼は私に彼を殴り返すことを望んでいましたが、私はそうしないことを選びました」米国の番組グッドモーニングアメリカとのインタビューの一部で、ハリーは、亡くなった母親のダイアナ皇太子妃は、息子たちの壊れた関係について「悲しかった」だろう、と語っている。彼はまた、現在の妻であるサセックス公爵夫人と付き合い始める前に「おそらく偏見をもっていた」、そして英国のマスコミがアメリカの混血女優との関係をどのように扱うかについて「信じられないほど無知」だったとCBSに語った。
(※1)ティモシー・トーマス・シリル・コリンズ大佐(1960年4月30日生まれ)
イギリス陸軍北アイルランド軍退役将校。2003年のイラク戦争での彼の役割と彼の戦闘前夜のスピーチで最もよく知られている。
現在、インテリジェンスベースのセキュリティサービス会社Pinpoint Corporateの創立者の一人であり会長を務めている。(ウィペディア)

(※2)ITV
Independence Television イギリスの大手民間テレビ局。

(※3)Tom Bradby
Thomas Matthew Bradby (1967-) 英国のジャーナリスト兼小説家。
2023年1月7日(土) 15:00〜
1)2022年11月23日付
Supreme Court ruling: Why a de-facto independence referendum is irrelevant and politicians must decide on lawful indyref2 route
「最高裁判所の判決: 第1に、事実上の独立のための住民投票は的はずれであること、第2に、政治家が合法的に2回目の住民 投票への道筋を決定しなければならないということ」

2021年度の最も正当な法的予測に対する賞は、確実に最高民事裁判所長官であり、当法廷の裁判長であるカーロウェイ卿に贈られるだろう。
キアラン・マーチン(※)
昨年 4月、スコットランド議会が独立に関する住民投票を実施する権限を持っているかどうかについて、まったく仮説的な事例で判決を下すことを拒否して、仮に最高裁判所に実際の例が持ち込まれるなら、それは法案が「スコットランド王国とイングランド王国の連合に関係する」かどうかに依存するであろう、と彼は述べた。 そして、このように考えると、彼は「結論に達するのはそれほど難しくないかもしれない」と辛辣に予測した。
そして、それは証明された。 最高裁判所 (スコットランド) の長官であるアレルミュアのリード卿は、彼の同僚が仕事をいかに迅速に完了したかを歓迎することで、彼の発言は口火を切った。 そして彼らの見解は強調されていた。「スコットランド議会はウェストミンスター議会によって設立された」という最初の言葉とともに、リード卿は、ホリールードに対するウェストミンスターの完全で絶対的な法的優位性について、微妙ではあるが決定的な表明をした。 この問題に関して精通している評論家は、この瞬間から我々がどこに向かっているのかを認識した。
ロンドンのイギリス最高裁判所の外で、独立についての住民投票を実施する権限をスコットランド議会に与えるか、または拒否するかの最高裁判所の判事による決定を待っている人々。
写真:アーロン・チョウン/PA Wire
起こったことを過度に大げさにしないことが重要である。 この法的な結果は予測可能であり、予測されていた。裁判官がしたすべては、ほとんどの専門家が予想したように法律を解釈することだけだった。 最高裁判所の判決を待ちながら座っている政治に関わるすべての人々の中には、どこかアメリカ的な何かがあったが、イギリスはアメリカではなく、イギリスの最高裁判所は──幸いなことに──政治的に扱われるということはない。最も熱心なナショナリストでさえ、2016年の EU離脱からの怪しげな「国民の敵」という無意味なことを繰り返す正当な理由はない。
判事たちは、正確さ、明快さ、スピードをもって仕事をした。 スコットランドは軍事的な圧制に苦しむ植民地ではないという彼らの最も政治的」な観察でさえ、明らかに正しく、そして国際法において適切に背景とともに考察されていた。 2012年1月に公表された最初の住民投票に関するスコットランド政府の諮問文書は記憶しておく必要がある。それはイギリス政府の合意に基づいて住民投票が行われることが明らかになる以前のことであるからである。このことはアレックス・サモンドという人が記す次の前文に含まれていた。「スコットランドは抑圧されていなく、解放されることを求めていない」。 スコットランド国民党(SNP) の法廷への提出文書に内在する「植民地主義」という主張 (スコットランド政府のものではないが) は思慮のないものであり、当然のこととして却下された。 このようになることは最初からわかっていたように、政治に戻って来る。 実際、結果がどうであれ、それは政治に戻って来たであろう。住民投票を認めるという衝撃的な決定があったとすれば、統一主義者が参加したかどうか、そしてロンドンの政府がその結果の実行を公約したかどうかに焦点が移ってきたであろう.独立はこれまでも法的な問題にならなかったし、これからもなることはないだろう。 それは政治的なものである。 スコットランド政府とより広範な運動が求める独立の形式は、武力による独立ではなく、イギリス政府と合意した交渉による分離である。 つまり、プロセスのある段階で、ウェストミンスター(イギリス議会)はホリールード(スコットランド議会)とプロセスに同意しなければならないということである。 それが実現可能でない限り、独立への道はない。 この完全に正しく明白な判決に続いて、スコットランドの政治は、独立の追求が正当な政治的な強い願望とみなされ、国の主要な政治問題であるというばかげた状況にとどまっていることである. しかし、それを達成するための合法的で民主的な方法は現在のところない。

しかし方法はあるはずである。 そして、それに同意して決定するのは政治家の責任である。
より強硬な統一主義者の何人かは、正しくも、ほとんどの民主国家は自身による分裂を認めていないと指摘している。そして、イギリスが何故そうすべきなのか理由を尋ねている。 その答えは、イギリスは1998年協定を通じて、北アイルランドによる独自の分割を認めているということである。 それは2014年にスコットランドに方法を提供したということである。イギリスースコットランド同盟が実際に自発的なものであるならば、たとえハードルが高くても、それを離脱することを決定する何らかの方法が必要である。したがって、多数派がそう望む場合、スコットランドがどのように独立できるかという政治的問題に対応されなければならない。 ゴードン・ブラウン元首相が率いる委員会の長期に待ち望んだ報告書に続く、労働党の次期政体改革案がこの問題に対応するであろうかどうかは、これからのことである。

統一主義者たちが現在、この不合理と向かい合わなければならないのを救っているのは、スコットランドは独立の問題で深く分断したままであるけれど、せいぜい3分の1以上のスコットランド人が賛成していることで、さらなるきわめて破壊的な住民投票を短期的には急いでいないということである。 しかし、はるかに多くの人々が中期的には住民投票が行われることに満足している。 だからその問題は消えないだろう。 そして、「今はその時ではない」と言う人は、ゆくゆくはその時が来ることを理解しなければならない。
このプロセスを通してのスコットランド政府の行動は、完全に合法で平和的かつ民主的であり続け、首相の反応はその傾向の中で続いた. したがって、彼らに開かれている唯一の合法的かつ民主的な選択肢は、できるだけ多くの機会にできるだけ多くの票を獲得しようと務めることであり、ウェストミンスターに独立に向けてのメカニズムに同意するように圧力をかけることである。

2024年の総選挙が独立に関する事実上の住民投票であるかどうかという問題は的外れである。 唯一の重要な問題は、スコットランドの独立が多数派の支持を得ているとみなされるかどうかであり、もしそうならば、そしてウェストミンスターが再び法的な権限を使って住民の意志をテストすることを抑えようとするならば、もそういうことが起きれば、イギリスはもはや自由意志の国家とみなすことはできなくなる。
これらすべてが意味することは、独立をめぐる白熱した争いが、当面は、スコットランドの政治における支配的な問題であり続けるということであろう。 スコットランドのナショナリズムが独立への道を決して訴訟に持ち込むつもりはなかったように、統一主義もまたそれを訴えることはできないであろう。

キアラン・マーチン教授(CB)(※)は、オックスフォード大学ブラヴァトニク行政大学院の教授。 英国の元上級公務員であり、連合の下で憲法長官として、2014年の独立住民投票の枠組みであるエジンバラ協定の交渉を支援した。
(※)(CB)
バス勲章(英語:Order of the Bath)は、イギリスの騎士団勲章(Order)のひとつ。

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