◆読書会 活動報告 2016年◆
2016年 11月28日(木) 参加者8名
読んだ本:
「スコットランド史」
ロザリンド・ミチスン編 富田理恵・家入葉子訳 未来社
編者序文。
イングランドの学校でブリテン史と云えば、イングランド史一辺倒である。
スコットランドでも歴史といえば、スコットランド史、ウェールズ史、アイルランド史が研究や教育の場で見直されている。
本書はスコットランドの歴史を内外の人々に紹介する目的で編まれたものである。サルタイア協会の依頼によって、第一線のスコットランド史家、8名によって書かれたものである。

スコットランド人の起源はと考えると、4世紀から5世紀にかけて、アイルランドから移住したスコット人とアーガイルを追われたピクト人の中で、特定すれば、おそらくピクト人となるであろう。6世紀ごろ、ピクト人によってアルバ王国が成立し、9世紀にスコット人のダルダリア王国を併合している。それがスコットランド王国の母体となった。

13世紀から14世紀、イングランドの対外政策の重点がフランスからスコットランドに向けられたが、スコットランドは独立を守った。

16世紀、スコットランドはプロテスタントの説教者ジョン・ノックスとカトリック君主のメアリ女王との対立の世紀であった。
この時期にスコットランドには、三つのルネサンスが花開いた。
「君主のルネサンス」「貴族のルネサンス」「新興の人々によるルネサンス」

1603年スコットランド王位とイングランド王位が一つになり、君主連合が開始される。
スコットランドにとって、イングランドとの友好関係がプロテスタント体制存続の鍵であった。

1707年イングランドとスコットランドの議会の合同が行われた。
イングランドは政治統合の名のもとに、少数のスコットランド代表を加えたのみで単一のブリテン議会を作った。
法律と宗教におけるスコットランドの独自性維持とイングランドとの自由貿易を謳っているが、本質的にはイングランド主導の併合であった。

1775年頃から、スコットランドのハイランドとローランドで農業の商業化が進む。中でもグラスゴーの商業の躍進は目覚ましかった。 ヴィクトリア時代(1837-1901)に、スコットランドは農業中心の社会から工業化した都市社会に変容する。

18世紀に開発した蒸気機関によって蒸気機関車、蒸気船の発達で長距離の移動が容易になると、スコットランドは外の世界ともつながった。18世紀のスコットランドの経済成長はイングランドに後れをとっていたが19世紀の終わりは世界をリードするに至った。

19世紀のスコットランドの都市化は、ヨーロッパでも例を見ない勢いであった。
スコットランドの人口の1/3は4大都市(グラスゴー、エディンバラ、アバディーン、ダンディー)に集中した。
19世紀後半のスコットランド社会においての中心的な課題は宗教面での教派の対立であった。教会が行っていた社会保障制度である「救貧法」と同じく教会によって行われていた「教育」が、教派の対立によって立ち行かなくなり国家が担当することになった。
1979年スコットランド、ウェールズ法(権限移譲のための法律)が、住民投票によって否決された。
1997年スコットランド生まれのトニー・ブレアー首相のもとで行われた権限移譲についての住民投票では76%の賛成票を得てスコットランド議会の開設が決まった。

この本を読んで:
スコットランドの王国の成り立ちから、イングランドとの長年にわたる紆余曲折を経て、スコットランド議会の設立に至るまでをたどって、スコットランド人が強い民族意識を持っていることに深い感銘を受けた。
(担当:加藤田カツ子)
【次回】
JSS読書会は2017年1月23日(月)午後11時半より14時まで。
読む本:「ケルト美術の招待」 鶴岡真弓著 ちくま新書
会場:新宿維新號
参加ご希望など、お問い合わせは事務局までお願いいたします。
2016年 10月13日(木) 参加者6名
読んだ本:
「鹿鳴館の貴婦人 大山捨松」
著者 久野明子 中央公論社
日本初の女子留学生の一人、大山捨松を曾祖母にもつ著者は、テニス仲間のアメリカ人の友人から
「日本の女性で最初にアメリカの大学を卒業した人は誰だったのかしら?」と聞かれる。
それは自分の曾祖母の捨松だ。そこから、著者の探求が始まる。

「明治維新という日本の近代化の夜明けに、五人の女子留学生の一人として、なぜ十二歳の捨松が、『よく勉学に励み日本女性の範となるべし』という国家的使命を追わされてアメリカへ行くことになったのか、突然言葉も通じない異文化の中に放り出されて十年間、捨松はどのような家庭で育てられ、どのような娘時代を送ったのか、また帰国後、なぜ十八歳も年が離れ、三人も娘のあった私の曽祖父、当時の陸軍卿大山巌との結婚を急いだのか、『鹿鳴館に咲いた名花』とうたわれた捨松ではあったが、約四十年間の結婚生活でアメリカでの体験をどのように生かしたのか」

こうした自分の素朴な疑問に対しての答えを求めて著者は一歩一歩進んでいった。
その成果であるこの本を読み、私たちはいろいろと感銘を受けた。捨松の出身校であるバッサーカレッジの同窓会事務局やエール大学の資料の保存と管理の素晴らしさ、またその対応の丁寧さ、捨松や津田梅子の時代の善意のアメリカ、帰国した彼女たちのお国のために一生を捧げる気持ち、近代化がスタートしたばかりの明治時代での彼女たちの苦悩と活躍、などなど。
著者は自分の疑問を明らかにしながら、手に入る限りの資料と調査から捨松という百年ほど前に活躍した曾祖母の実像に迫った。捨松もこの本を見ることができたら、きっと素晴らしい曾孫だと誇りに思うことだろう。
(担当:山崎美世子)
【次回】
JSS読書会は2016年11月28日(月)午後14時半より16時半まで。
読む本:「スコットラン史」 ロザリンド・ミチスン 編 未来社
参加ご希望など、お問い合わせは事務局までお願いいたします。
2016年 9月15日(木) 参加者6名
読んだ本:
「イギリス人アナリスト日本の国宝を守る」
著者 デービット・アトキンソン 講談社α新書
著者は1965年イギリス生まれ、オックスフォード大学で「日本学」専攻、大学卒業後、米国コンサルタント会社を経て、ソロモンブラザースに入社し日本の銀行を担当するアナリストとして来日。その後1992年にはゴールドマン・サックスにヘッドハンティングされ、日本経済と金融機関を分析するアナリストとして活躍しました。ただ当時日本経済はバブルがはじけ、銀行は多額の不良債権を抱えている時期で、そのことを指摘するアトキンソン氏の正確な数字のレポートに日本の銀行の経営者は激しい拒否的態度を示した。銀行家だけでなく、右翼の街宣車までやって来る騒ぎに、氏は「おかしい点を指摘すると、袋叩きに会う、日本人とは謎の民族だ」と思ったという。

傷心している著者に日本の友人が茶道を紹介してくれた。茶の奥深さに引き込まれ、京都で趣味の生活に没頭しているとき、小西美術工芸という文化財修復の会社の社長と出会い、会社の経営を任された。会社が抱えている職人の後継者不足と技術の低下をいかに防ぐかという二つの問題解決に成功する。多くの職人は日雇いの非正規雇用から正社員にして技術が向上した。この仕事を通して、世界でもまれな勤勉な労働者が世界第二の経済大国を作ったということが解かった。

「やるべき事をやれば日本の組織は劇的に改善する」と著者は断言する。
日本人の欠点、シンプルアンサーが好きで、問題をうやむやにし、効率が悪く、数字を無視し、サイエンスが足りない等など著者の指摘には日本人は大いに耳を傾けるべきである。特に文化財の保護に対する国家予算が余りに少ない。これからは観光にもっと力を入れ、前向きに賢く解決するマインドを持つようにと大切な助言があった。

この本を読んで参加者6名とも観光についても経験を語り、日常生活の問題を重ね合わせ、気付かなかった事を沢山気づかせてもらいました。大勢の人に読んでもらいたいというのが全員の感想でした。
(担当:近岡庸子)
【次回】
JSS読書会は2016年10月13日(木)午後14時半より16時半まで。
読む本:「鹿鳴館の貴婦人 大山捨松―日本初の女子留学生 」 久野明子 著 中公文庫
参加ご希望など、お問い合わせは事務局までお願いいたします。
2016年 7月14日(木) 参加者9名
読んだ本:
「ぼくのジャングル」(富盛菊枝児童文学選集3)
富盛菊枝(児童文学作家・日本文芸家協会会員) 影書房 2016年4月発刊
<あらすじ>
緑の多い街の団地の5階に住むたつおは、小学校3年生で両親は共働きの鍵っ子。放課後帰宅してもおやつだけが待っている。彼の楽しみは近くの動物園へ行くこと。サル山でサルの赤ちゃんを見て以来、ピッキィと名付け、やがて友だちになり、孤独から解放される。
ある夜、たつおは父さんの戦争体験を聞く。若いころ南の島のジャングルで暮らしたこと、それに団地が建つ前は森だったことも。その言葉がたつおの想像力を刺激した。増築中の鉄骨の林も含めアパート・ジャングルの舞台が展開する。好奇心の固まりのピッキィとたつおは果敢にジャングルを探検して遊ぶ。やがてたつおは、ピッキィの幸せのため動物園から逃がし自由にしてやりたいと願うようになり、策略を練って実行に移すが……。

この作品は、作者が20代後半の、1965年6月に理論社から出版されたデビュー作で、リアリズムとファンタジーが見事に融合している。

<参加者の感想から>
★主人公の生き生きした行動力がリズム感のある文体で描かれていてぐいぐい作品の世界にひきこまれた。
★同時代に生きた人間として、大人の読者にも読みごたえがあった。
★団地が出現した当時は入居基準が厳しく抽選に外れたりして高嶺の花だったなど。

「富盛菊枝児童文学選集3」には「ぼくのジャングル」の他に中・短編が13篇入っている。
「階段のてっぺんで」の作品は夕張炭坑が舞台でエネルギー変革期に生きる二人の学童の友情が爽やかに描かれ、歴史のモニュメント的な作品だと評価された。
また「マサコ」も注目を浴び、話題が広がった。周りから恐れられ疎外されたバカマサコ。小学校6年生のしず(作者の分身)はマサコと石蹴り遊びをした夢のあと、マサコって本当は強くて優しく賢いのでは、と心を寄せる。
ちなみに「マサコ」は26年後に『いたどり谷にきえたふたり』(この選集の2に所収)のタイトルで出版された書き下ろし作品に再登場する。主人公は、貧しく不登校児のバカマサコと朝鮮から強制連行されたキム少年。太平洋戦争下の鉄の街室蘭が舞台。作者の分身である1年生のしずの視点から物語られる。戦争ができる国へと舵を切られた今だからこそ、児童だけでなく、戦争を知らない若い世代の人達にも是非読んで欲しい1冊だ。
1970年代、NHKラジオ番組「お話出てこい」の掌編童話3編も収録されていて、作者の幅広い活動を知ることができた。
巻末の6名の方の「作品・作家論抄」はとても参考になる。自分の読みの浅さを気付かせてくれた。できれば巻末に富盛菊枝・人と作品年譜みたいなものが欲しかった。次の全集の上梓の機会に期待しよう。
(担当:西田多恵)
【次回】
JSS読書会は2016年9月15日(木)午後14時半より16時半まで。
読む本:「イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る」 デービッド・アトキンソン著 講談社+α新書
参加ご希望など、お問い合わせは事務局までお願いいたします。
2016年 6月9日(木) 参加者7名
読んだ本:
「スコットランドの聖なる石」
小林章夫著 NHKブックス
1707年5月、スコットランドと云う国は英国に合併されて連合王国の一部となった。民意にもかかわらず、このとき独立国の体は失われた。

1999年7月1日、長い構想の歴史を経て「1707年3月25日以降300年間一時休会していたスコットランド議会をここに再開する……」との宣言をもってスコットランドは再び自治権を取り戻すことになった。

さらに、2014年秋、スコットランド人は、世界が固唾をのんで見まもる中、完全独立の是非を問う国民投票を行うのである。が。長年のくされ縁は解消されることはなかった。

そもそも、なぜ英国はこの国を合併し、連合王国の一部としたのか、本書はこのいきさつに焦点を当てて書かれている。
18世紀、当時ヨーロッパでは、スペイン戦争が勢力争いの中心であり、この争いに集中したい英国は何かとフランスと関係のあるスコットランドを自国の一部に取り込むべく画策する。立役者はトーリーの領袖ロバート・ハーリーなる人物である。
「プロパガンダ・マシン」なるものを作ったり、情報網を自在に操って行動する。その手先となって働くのがダニエル・デュホーとジョナサン・スイフトであった。前者は「ロビンソン・クルーソー」の、後者は「ガリヴァー旅行記」の作者である。デフォーは「レヴュー」なる新聞を駆使し、民衆を合併へと誘導し成功させる。
各省冒頭の旅のエピソードや、18世紀英国文学の専門家の作者は、個々の人物の情報も豊富で、歴史小説を読む楽しさを味わった。

ところがである!今月23日英国は、「EUからの離脱を問う」国民投票を行う。
特にフランスと長年縁のあるスコットランドは、残留組である。結果次第では、連合王国からの分離独立への導火線となるかも……と言われているのである。             
(担当:高橋知子)
【次回】
JSS読書会は2016年7月14日(木)午後14時半より16時半まで。
読む本:「僕のジャングル」 富森菊枝著 影書房
参加ご希望など、お問い合わせは事務局までお願いいたします。
2016年 5月12日(木) 参加者9名
読んだ本:
「夏の沈黙」
ルネ・ナイト著 古賀弥生訳 東京創元社
テレビのドキュメンタリー制作者のキャサリン、夫のロバートは弁護士、25歳の息子ニコラスは薬物に手を出した過去があるが今は百貨店の電気製品売り場勤務。両親の期待とは程遠いが平穏な日々を送っている。
キャサリンが手掛けた番組が賞を獲得、夫は優しい、順風漫歩な彼女に、一冊の本届く。
その本の主人公は彼女自身だった。20年間隠してきた秘密。20年前の夏。スペインの海での出来事。5歳のニコラスが波にのまれそうになったが、それを19歳の少年ジョナサンが助けてくれたが直後に溺死してしまう。ジョナサンの母親ナンシーは彼の遺品整理中、数十枚の写真を見つける。セクシーなキャサリンのビキニ姿。もともと小説家志望だった彼女は、悪意に満ちたストーリーをでっちあげる。数年後ナンシーは癌のため死亡。奥深く隠していたその原稿を夫のスティーヴンが見つける。彼は小児性愛者とのうわさがあった元教師。妻の書いた筋書きをすっかり信じた彼はキャサリン一家に襲い掛かる。スティーヴンが書き直した結末のようにキャサリンは轢死するのか、衝撃の結末へと一気読みした。
なかなか読みにくい本であったが、25か国で刊行された話題作を読むことができた。
(担当:島越輝世)
【次回】
JSS読書会は2016年6月9日(木)午後14時半より16時半まで。
読む本:「スコットランドの聖なる石」 小林章夫著 NHKブックス
参加ご希望など、お問い合わせは事務局までお願いいたします。
2016年 4月14日(木) 参加者10名
読んだ本:
インドの児童文学5冊(書名は本文参照)
鈴木千歳 訳・編
今回とりあげた『パンチャタントラ物語』マノラマ・ジャファ再話(出帆新社 2007)はインドでは誰でも知っている古代説話の絵本である。収録されている30話の中で、「聖者の娘の結婚」と「「サルとワニ」はそれぞれ日本の民話「ねずみの嫁入り」「サルに生き肝」に極似しており、これら日本の民話のルーツがインドにあることが分り、参加者から驚きの声がきかれた。インドの説話が仏教伝来の経典で日本に渡来し、その面白さが独り歩きして日本の民話に定着したと考えられる。

他の4冊は創作物語。
インドで創作児童文学が始まったのは1947年の英国植民地からの独立後で、荒廃したインドの復興に不可欠である児童文化の向上をめざして行われた創作児童文学コンクールの第一位入選作が『密猟者を追え』アルプ・クマル・ダッタ作(佑学社 1986)。象に乗った3人の少年たちが森を駆けめぐりサイの密猟者逮捕に活躍する自然保護を訴えるミステリー。

コンクール第2位の『盲目の目撃者』1987は同じ作者と出版社で、盲目の少年が研ぎ澄まされた聴覚で犯人の足音を識別し、点字で犯人逮捕に貢献する同じくミステリー。(社)日本ライトハウスから点字で訳本が出版されており、障害者は劣っているのではない、人間として同じである、という主張は多くの盲人の共感を呼んでいる。

『トラの歯のネックレス』インド児童文学作家・イラストレーター協会(ぬぷん児童図書出版 1998)は12編の短編集。表題作はトラの密猟の話。「コーラ二箱」はIT先進国のインドらしく、父親の会社のコンピューターを悪戯した子どもが許される話。総じてハッピーエンドであるが、作者たちが、インドの子どもたちに託した望ましい姿であるといえようか。

『ヒマラヤの風にのって』ラスキン・ボンド作(段々社 2009)はヤングアダルト向きで、12編の短編集。
以上5冊からは、象やトラなど多くの動物たちが身近に登場することや、舞台となるスケールの大きい自然から、インドらしさが感じられたというのが参加者の大方の感想であった。
(担当:鈴木千歳)
【次回】
JSS読書会は2016年5月12日(第二火曜日)14時半〜16時半
読む本:「夏の沈黙」 ルネ・ナイト 古賀弥生訳 東京創元社

今後読む本をお知らせします。
6月:「スコットランドの聖なる石」 小林章夫 NHKブックス
7月:「イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る」 デービッド・アトキンソン 講談社+α新書
9月:「ぼくのジャングル」 富森菊枝
2016年 2月18日(木) 参加者8名
読んだ本:
「日本人の戦争」
ドナルド・キーン著 文春文庫
11月に読んだドナルド・キーンの「二つの母国に生きて」に続いて「日本人の戦争」を取り上げた。
日本の国が生まれてから今日までの歴史の中で最も劇的なこの5年間{大東亜戦争が始まった昭和16年(1941)後半から、連合軍の日本占領の最初の一年か終わる昭和21年(1946)後半}をどうしても書かねばならなかったというキーン氏の熱い思いが読み取れる。
年代や環境の異なる作家たちの日記を通して当時の日本人の置かれた環境、日本人の心情、戦争観、国民性を彼独特のバランスの取れた冷静な目で綴っている。
「一億総動員」といわれ言論統制の中で作家個人個人が自分だけの小さな言葉の世界で書き残してくれていることは過去を忘れ前へ進むことしか考えない我々日本人にとって貴重な資料として大切に残しておきたい。
これも日本を愛し日本人を深く理解してくれるキーン氏ならではの大切な一冊の本だと思った。
(担当:大前智恵子)
【次回】
JSS読書会は2016年3月17日(木)午後14時半より。
読む本:「あぶない一神教」 槁爪大三郎、佐藤優著 小学館新書
参加ご希望など、お問い合わせは事務局までお願いいたします。
2016年 1月21日(木) 参加者10名
読んだ本:
R・L・スティーブンソンの著作の一つを読み、討論
今年も新年早々10名の参加でにぎやかに読書会がスタートしました。
今回は新年会もかねて、中華料理の丸いテーブルを囲み、スコットランドの代表的な作家、R・L・スティーブンソンの作品を自由に読んできて討論するという形式で行われました。

「ジーキル博士とハイド氏」は人間の二面性を表した小説で、多くの参加者が取り上げていました。
「バラントレーの若殿」は、歴史に題材を採り、ある貴族の兄弟の相克を描いたもので、とても“読みどく”といえる小説だとの感想も聴かれました。
また「新アラビア夜話」からの「医師と旅行鞄の話」を取り上げた人、スティーブンソンが吉田松陰のことを書いたことを題材にした吉田みどり著「烈々たる日本人」、加えて吉田松陰が松下村塾の弟子たちに残した遺書「留魂録」を取り上げた人など、さまざまでした。

幼い時から病弱であったスティーブンソンは、エディンバラで法律を勉強しましたが、その後すぐにフランスに旅行し、そこでアメリカ人女性と恋に落ちました。彼女は既婚者で子供もいましたが、帰国した彼女を追ってスティーブンソンはアメリカまで当時3週間以上もかかって会いに行き、いろいろの波乱のあと、彼女の離婚の成立と、スティーブンソンの親の理解と援助もやっと得られ、カリフォルニアで結婚することができました。29歳の青白くてひょろっとしたスティーブンソンと40歳を少し過ぎたがっちりとしたアメリカ人ファニーとのカップルが誕生し、三年後には「宝島」を発表、その後「ジーキル博士とハイド氏」、「誘拐されて」などを病身ながら書きましたが転地先のサモアで44歳の若さで亡くなりました。
サモアの人々から“トゥシターラ“=ポリネシア語で「物語る人」と呼ばれていたスティーブンソンは、今回のように作品をいろいろ広く比べてみると、彼のアメリカ行きの経験やサモアでの経験などがいたるところで語られているのがわかり、生きてること自体が彼の文章になっていったのがよくわかるような気がしました。まさに「物語る人」ですね。
(担当:山崎美世子)
【次回】
JSS読書会は2016年2月18日(木)午後2時半より。
読む本は「日本人の戦争」 ドナルド・キーン著(文春文庫)
参加ご希望など、お問い合わせは事務局までお願いいたします。

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