◆読書会 活動報告 2011年◆
2011年 10月20日(木) 15:00〜 参加者8名
読んだ本:
「ウェイヴァリー――あるいは60年前の物語」中巻
サー・ウオルター・スコット著 佐藤猛郎訳 万葉新書

ローランドから、ハイランドのグレナクォイヒの領主、ファーガス・マッキーバーのもとに着いたエドワード・ウエィヴァリーは、ブラドワーデン男爵の知人ということで歓迎を受ける。そこに滞在中ファーガスに好意をだくようになり、また魅惑的な彼の妹フローラに心を奪われる。ウエィヴァリーはイングランドの政府の要職にあった父の失脚などで、結果的には竜騎兵連隊大尉の職を辞めることになる。ファーガスはこの機に、ウエィヴァリーを自分たちの計画に誘おうとするが、その出陣=反乱に加わる気はないと断る。

その後、ウエィヴァリーは自分の意志とは関係なく、さまざまな事件に巻き込まれ、その都度、いろいろな人と出会いながら導かれるようにエジンバラに近い、メンティース地方のドゥーン城(反乱軍の拠点)を経てホリールード宮殿に着く。そこで、スチュアート王子に引き合わされ、「父祖のものだった王座を取り戻すために命をかける戦いに加わってくれるように」と誘われる。
フローラにも再会し、長い間の募る思いを告白するが受け入れられない。イギリス軍とハイランド軍の熾烈な戦いの中、エドワードは叔父の小作人の息子やかつての上司ガードナー大佐の最後を見届ける。
「私は祖国への反逆者、裏切りもの、生れ故郷のイングランドの敵になったのか」と苦悩する。
プレストンバンズの戦いはハイランド軍の大勝利で終わる。

スコットランド生まれのウオルター・スコットが、「フォーティファイブ」と呼ばれる歴史的な戦いをスコットランド側から描いた歴史小説であることが深く理解できた。フローラが英雄ウォーガンにささげた「オークの木に寄す」の詩は、熱情があふれていて、読む者の心に迫ってくる。

ウエィヴァリーには下巻でどんな展開が待っているのか愉しみである。
(担当:加藤田)
2011年 9月15日(木) 15:00〜 参加者10名
読んだ本:
「ウェイヴァリー――あるいは60年前の物語」(上巻)
サー・ウオルター・スコット著 佐藤猛郎訳 万葉新書

9月15日午後3時から、新宿の事務所で、月例の読書会がもたれた。
5日連続の真夏日とか、その日も朝からひどく暑かったが、出席者は10人、欠席者はやむを得ない事情の2人だけだった。

今回のテキストは、スコットランドの偉大な詩人で作家ウォルター・スコットの小説
『ウェイヴァリー――あるいは60年前の物語』(上巻)である。
この小説は「フォーティー・ファイブ」と呼ばれる英国史上有名なジャコバイトの反乱事件を背景にした、イングランドの若き青年ウェイヴァリーの波瀾万丈の恋と冒険の物語である。訳者は私たちの佐藤猛郎先生。ページを捲ると、冒頭に、シェイクスピアの「ヘンリー4世 第2部」からの引用句、“下郎め、いずれの王の手の者か?言え、さもないと生命はもらったぞ!”が掲げられている。この句は、“ハノーバー家とステュアート家のどちらの王に忠誠を捧げるべきか”というこの物語の主要なテーマを象徴するものであるが、この訳文に端的に見られるように、先生の訳は、全編を通して簡潔で的確、格調の高さと品格を感じさせるまさに名訳である。

楽しい語らいの中に、2時間の読書会はあっという間に終わった。そのあと、いつものように近くの中華料理店で軽食と雑談のひとときを過ごしたが、時々、著者や訳者を交えて行われるこの読書会の贅沢さを思い、その会に参加できている幸せをみんなで満喫したひとときでもあった。
(担当:吉田良吉)
2011年 7月28日(木) 15:00〜 参加者9名
読んだ本:
「ひそやかな村」」
ダグラス・ダン著 中野康司訳 白水社

著者ダグラス・ダンは1942年スコットランドのレンフルーシャー生まれの詩人詩作品の部門では72年にサマーセットモーム賞、76年にフェーバー記念賞、86年には年間最優秀作品賞を受賞.「ひそやかな村」は著者の小説としては処女短編小説集。 「スコットランド文学 その流れと本質」(木村正俊編) (開文社)にはダグラス・ダンは“根無し草のコスモポリタン”と記してある。

「ひそやかな村」は13篇のイギリスの田舎の平凡な人々の日常をテーマにしている短編集である。特別の大事件や読者の興味をそそる筋立てを描いているわけではないが、日常の出来事の切り取り方に詩人である作者の感性の鋭さが感じられる。読書会のメンバーが高年齢であるための感じ方の違いなのか登場人物はそれぞれ私たちには予想できない行動や考え方をするが、隣人のように身近に、情景が印象的なのは作者の観察力の細やかさや力量なのでしょう。登場人物の会話や行動に苦笑し、納得し、胸が打たれる。
2011年 6月17日(木) 15:00〜 参加者9名
読んだ本:
「灯台へ」
ヴァ−ジニア・ウルフ著

今出版されているのは5種類位。一番新しいのが御輿哲也訳(2004年岩波文庫)で、急速に版を重ねているようだ。
なぜ今、ヴァ−ジニア・ウルフなのか。最後まで読みとおした皆が皆、時代がうつり訳者が変わっても彼女の作品はすらすら読めるものではないという吐息交じりの感想を持った。と同時に、作家がその手法で表現したかったものは何なのかという本題にぶつかった。

「灯台へ」の舞台はヘブリディーズ諸島のスカイ島で、女主人公ラムジイ夫人は、ヴァ−ジニアの母でヴィクトリア朝を生きた女性がモデルだ。その夫はむろん父だが、頑固で独断的な学者として現れる。日常の些細な行き違いもふくめて人間関係をよい方向へ持っていくのは夫人の役割で、気を許すことができない。さらにこの家に出入りする男性も女性も、8人の子どもたちも、夫人の庇護なしではいられない。「明日、灯台へ行くの?」と問う男の子に、「今度のお天気の日にね」と約束しながら突然夫人は亡くなる。それから10年後、灯台行きは夫と子ども2人によって実現される。

これはある家族の物語というには、たくさんの人物が出入りし、過去は現在にかかわりあっている。開かれた人である夫人が抱えるさまざまな葛藤は、けっしてその時代だけのものではないようだ。作者は自覚的な女性の生き方を探り、その生の輝きをつかもうとしたのではないか。
始めから終わりまで波の響きがしている。夜になると灯台の一つ眼が黄色く開き、海辺の家に光が届く。潮の香と海風が身にしみこむ。小さいときから、ヴァ−ジニアは一家で毎夏をこのような環境で過ごしたという。それはコーンウォールのセント・アイヴィスであり、広い湾の入り口と見えるあたり、ここにも白い灯台が立っている。
2011年 5月19日(木) 15:00〜 参加者11名
読んだ本:
「長崎グラバ−邸父子二代」
山口由美著 集英社新書

明治維新の影の立役者ともいわれる武器商人であったトーマス・グラバーの一生と彼の息子で原爆投下後に命を絶たなければならなかった倉場富三郎の生き方はあまりにもかけ離れたものだった。時代もそのように激しく変わっていったということが二人の対比でより如実に表されている。
2011年 2月24日(木) 15:00〜 参加者9名
読んだ本:
「ヒバリを追って」
ジョージ・マッカイ・ブラウン著 あるば書房

スコットランドの北東にあるオークニー諸島 で一生の大半を過ごして作者のオークニーの歴史と風土、人々に関する詩が40編集められたものである。詩は人々の心を刺激し、読者はそれなりの想像もたくましく膨らませて楽しむことになるが、特にオークニー諸島を実際に訪ねたことのある人にはブラウンの視点にうなずけるものが多いのではないだろうか。
2011年 1月22日(木) 15:00〜 参加者14名
昨年11月に逝去された元読書会の会員東浦義雄先生の著書はたくさん読書会で取り上げられましたが、その中で気にいった一冊を読んでくること。
と言うことで「スコットランドXIの謎」や「霧に包まれたイギリス人」などなどを読み、東浦先生のことをあらためてまた一歩深く知ることになり、先生の人柄や作品を懐かしくしのびました。
この日は新年会も兼ねていましたが、しばらく体調をくずされていた岸孝氏、吉田良吉氏も元気に出席、現在のフルメンバーがそろいました。 

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