スコッツマンを読む会 2025年5月
1)2025年2月1日付
Edinburgh needs a Lord Provost to stop incompetents tarmacking over cobbles and ruining New Town
「エディンバラに必要なのは新しい市長、頭の働かない者が石畳にアスファルトを敷いて ニュータウンを台無しにするのを止めるための新市長だ」
グレーター・マンチェスター市長のアンディ・バーナムのような直接選出されるロード・プロヴォスト(市長)(※1)がいれば、エディンバラの“制度的に染みついた無能さ”を終わらせる一助となるかもしれない。
我々には組織が制度的に人種差別的であり得ることが解っている。スコットランド(地方)警察やスコットランド・クリケット協会のいずれもがそのように断罪されている。しかし組織というものは、制度として無能たり得るのだろうか?
まず、この用語の意味の理解から始めよう。
マクファーソン報告書(※2)では、制度的な人種差別を“人の肌の色、文化或いは民族的出自を理由に、組織が適切かつ専門的な人的サービスを提供できなかった集団的失敗”と定義した。よってこの定義に基づけば、制度的な無能とは“組織が適切かつ専門的な人的サービスを人々に提供できていない集団的失敗”であると言えよう。
この基準によると、エディンバラ市議会は全ての条件に当てはまる。5年が遅れた上4億ポンドの予算超過となった10億ポンド規模のトラム(市電)プロジェクトから、学校建設の失敗や法定通知修繕工事のスキャンダル、更にはプリンシズ・ストリートの衰退を招いた都市ビジョンの欠如といった一連の問題により、愚劣の暗雲が市庁舎には垂れこんでいる。

大切にされなければならない。
ジョージ王朝式の豪華
その多くは見過ごされがちであるが、時には誰の目にも明らかになることがある。エディンバラのニュータウンは、今なお世界的に評価される都市計画の象徴である。
ジェームズ・クレッグ(※3)がその構想を発表してから250年が経った今も、人々が住み、就労するための街として働き続けている。そのジョージ王朝様式の壮麗さはエディンバラに世界遺産の地位をもたらしたが、これはどの都市も切望する偉大さの認証である。 人々は世界中から新古典主義建築(※4)、つまりゆるやかに連なるテラスハウス(長屋式集合住宅)や歴史ある石畳の通りを見るために訪れる。それは我々が大切に守り輝かせるべき貴重な資産である。しかしそうではなく、先週末には市の委託業者が市中心部のフレデリック・ストリートを封鎖し、歴史ある石畳の舗装の上にタールマカダム(※5)舗装を施す作業を行った。あるたった一日の午後で、そうした連中は個性ある大通りをどこにでもある普通の道に変えてしまったのだ。 どうやったらこんなに気軽に自らの遺産を扱えるのだろうか?我が街のジョージ王朝様式の景観は我々が敬意を払って維持すべきものであり、無造作に放り捨てるべきものではない。しかし、これは何年にもわたって続いてきた行動パターンの一部に過ぎないのだ 歩道のあらゆる場所に設置された不要な標識からシャーロット・スクエアに新設された見苦しい障がい者用スロープ、そしてあのWホテルという巨大で不格好なものまで-世界遺産の地位は大切に育んでいくべきものであるどころか、あるのが当然のものとして扱われているように思われる。
広き歩道に歩行者少なし
フレデリック・ストリートでの工事は明らかにジョージ・ストリート周辺の再開発計画の一環であり、市議会のウェブサイトに掲載された画像は、新しい花崗岩の石畳が敷かれた狭い道路を示している。しかしそれは歴史(的価値のあるもの)ではなく、必要なことでもない。
在宅勤務の普及やオンラインショッピングの増加を伴ったパンデミック以降、エディンバラ中心部の歩行者数は大きく減少している。それなのになぜ我々は歩道を広げているのだろうか?利用する人が少なくなっているのに。
それは滴るほどの(潤沢な)資金を持つ自治体にとっては興味深い副業プロジェクトかもしれないが、エディンバラ市議会は今年だけで3,000万ポンドの予算削減をして収支バランスを取る必要があるのだ。
この行動パターンは、歴代の多くの政権にわたって続いてきたもので、政治(的判断)ではなく政権の能力に関することである。エディンバラが望みうる最良のことは、市民によって選ばれ市民に対して責任を負う直接選挙で選ばれた市長(※6)を持とうとの声の高まりである。
アンディ・バーナムがマンチェスターに何をもたらしたか、(エディンバラとの)違いを見て何が可能なのか理解しよう。(直接選挙による市長の)地位は(その地位を目指す)何人もの素晴らしい候補者に魅力あるものと映るだろうが、今の所はただ有能な誰かであれば用が足りるだろう。
(※1)ロード・プロヴォスト
LordProvostエディンバラ、グラスゴー、ダンディー、アバディーン各市の市長
(※2)マクファーソン報告書(MacphersonReport)
1993年4月22日、ロンドン南部のバス停で人種差別的攻撃を受けたスティーブン・ローレンス氏が刺殺された事件の警察の捜査への強い批判を受け、当時の内務大臣ジャック・ストローが調査・報告を指示した報告書。1997年7月にウィリアム・マクファーソン卿を委員長とする司法調査が実施され、1999年2月24日に、“スティーブンの殺害に関する警察の捜査については‘職業的無能、制度的人種差別及び上級警察官の指導力の欠如が重なり深刻な欠陥が生じた’旨結論づけた。
(※3)ジェームズ・クレッグ(JamesCraig、1739-1795)
スコットランドの建築家。エディンバラ“ニュータウン”を設計した人物として知られる。
(※4)新古典主義建築
neo-classicalbuildings、NeoclassicalArchitecture-18世紀後期に、啓蒙思想や革命精神を背景として興った建築様式。ロココ芸術の過剰な装飾性や軽薄さに対する反動として荘厳さや崇高美を備えた建築が模索された。美を具現する唯一の様式として、英・独等の諸国に波及した。
(※5)タールマカダム(tarmacadam)
道路の舗装材として使われる、砕石とタールの混合物。
(※6)現在エディンバラ市長は、13世紀にまでさかのぼる“市政の頂点者”である。市長は通常4年に一度市議会議員63人の中から選ばれ、市議会招集権を持つ。2022年5月26日、ロバート・オルドリッジ市会議員が258代市長に選ばれた。