民話クラブの紹介
民話クラブでは月に一回、スコットランドの民話を読んでいます。コロナ明けの頃、一旦はリモートから対面に戻りましたが、現在は地方在住の方も参加しやすいように再びリモート開催となっています。
今、クラブで読んでいる本は、Tom Muir(トム・ミュア)さんの『ORKNEY FOLK TALES(オークニー・フォーク・テイルズ)』というオークニー諸島の民話集です。オークニーご出身・ご在住のミュアさんは、つい先ごろ、民話伝承の功績を称えられて大英帝国勲章(MBE)を受賞されました。ミュアさんは民話の語り部としての活動に尽力しておられ、YouTubeでもオークニー諸島の美しい映像とともに島々に伝わる民話の語り聞かせを少し無骨な感じの素敵な声で配信しておられます。この本の語り口も書き言葉というよりは、北国の島に住む男性が自らの思い出も交えながら低い声で紡ぐ昔語りを、夏の潮風に吹かれて草地の甘い香りをかぎながら、みんなで輪になって聞いているみたいです。真夜中に歩き出して湖の水を飲みに行く巨岩だって、まるで現在でも北方の島々でこっそりと息づいているかのよう。もしもホグマニー(12月31日)の晩にふと窓から顔を出して岩の秘密を見てしまったなら、あちら側に連れて行かれるかもしれない。そんなふうに思わされます。
民話クラブでは、まず英文テキストを読み、その場で訳をつくるというスタイルで輪読しています。懐かしいけれど退屈だった高校の英語の授業では、関係代名詞や副詞節などといった教科書ルールに従って後ろから訳した文をノートに書いてきては読み上げていたものですが、民話の会では原文の流れに沿って即興で訳して語ります。そうすることにより、言葉たちが炉端で語られる昔話らしく生き生きとしてくれるような気がします。この会で参加者のみなさんのお話を伺うたびに新鮮な驚きがあり、大人が仲間とともに学ぶ時間を持てることのありがたさを実感しています。
木もほとんど生えない北の果ての島々に伝わる物語たち。この紹介をお読みになったみなさまも、いっしょにご参加なさいませんか?
(民話クラブ員 久保田菜穂子)
民話クラブの活動予定はこちら https://japan-scotland.jp/page-266/#folktale