スコットランド便り 119 『ヴィンランド』

JSS NEWSLETTER スコットランド便り 119(2024/4/10 発行)より抜粋

『ヴィンランド』
ジョージ・マッカイ・ブラウン著 山田修訳 鳥影社(2023年)
ISBN 978-4—86782-062―9

「コロンブスより500年も前にヴァイキングが訪れていた北米の地―ヴィンランド。オークニー諸島に生まれ、ヴィンランドへの密航等、波乱に富んだ主人公の一代記。11世紀北欧の知られざる歴史物語」、スコットランド、オークニー諸島出身の作家、ジョージ・マッカイ・ブラウンの研究者であるJSS会員山田修さんの翻訳。

米寿を記念して
山田 修
 
『ヴィンランド』の翻訳は、ボケ防止にと始めたのが、そもそものきっかけです。初めは出版するつもりはなかったのですが、いざ出来上がってみると出したいと思い、今回自費出版した次第です。
『ヴィンランド』(1992)はオークニー諸島出身の詩人・作家ジョージ・マッカイ・ブラウンの4作目の小説です。サガのエピソードを背景にした、11世紀初めのオークニー諸島一男性の一代記です。主人公は前半、ヴィンランドやノルウェーに行ったり、クロンターフの戦いに加わったり、波乱に富んだ生活を送ります。後半は母方の祖父の農地を継ぎ、ひとかどの農場主となり、結婚して5人の子をもうけます。
ヴィンランドはコロンブスより500年近くも前に、ヴァイキングが訪れた北米の地です。小説の舞台の大半は祖父の農地ブレックネスで、ヴィンランドは主人公が若いころ訪れただけの地なのに、何故タイトルとしたのか、とはじめ思いました。もちろん、よく知られている地であることが理由の一つになると思います。でも、読んでみて感じたのは、ブラウンがヴィンランドの人びとの生活に、深く共感していることも大きな理由になっているのではないでしょうか。ヴィンランドへ行った船の船長レイヴ・エリクソンに次のようにいわしめています。「ヴィンランドの人びとは長い間、自分たちに必要な分だけ取って、動物や植物と調和と平和を保って生活してきたとわたしは思った。木や魚や鳥やクマは、人々が彼らに敬意を表し、彼らの友だちであることを知っており、それゆえ、ヴィンランドの万物全体が、すべての人が喜んで参加する一種の舞踏であるように思える」(翻訳、pp. 51-2)と。
ヴィンランドの意味は、サガでは「ブドウの地」としておりますが、近年では「牧草の地、草原の地」という説が言われています。ブラウンはサガに従って「ブドウの地」としています。ちなみに、漫画『ヴィンランド・サガ』では「草原の地」(第1巻第3話)です。
地名の場所など不明の点をオークニー在住の人にうかがいました。日本の方のほうがどうしても聞きやすいので、「オークニーから」を書かれているジョンストン・由香さんに伺いました。頻繁にうかがうので、由香さんから「五月雨式に聞かれるのは困る、まとめて質問してください」と叱られてしまいました。あの折にはお世話になったことに深謝するとともに、ご迷惑をおかけしたことを、この紙面を借りて深くお詫び申し上げます。 

(やまだ・おさむ)

(※この本は、山田修さんより寄贈されました。JSS図書に収蔵しています)

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