スコットランドを語る会 第113回

発表者:加藤秀さん
テーマ:「スコットランドの秘境」

本講演では、写真家である加藤秀がこれまでに訪れ撮影した地の中から5カ所を選び「スコットランドの秘境」と題してそれぞれの土地を紹介しました。単に写真をご覧頂くだけではなく、歴史や背景、訪問にまつわるエピソードなどを動画も交えて紹介しました。

秘境として紹介されたのは、スカイ島のエルゴール、シェトランド最南端のフェア島、ハイランド荒野の只中にあるカラー駅、サザーランドの山スイルヴェン、そして絶海の孤島セント・キルダです。
これらの場所に共通するのは、アクセスの困難さや地理的孤立だけではありません。そこでは人間の営みが自然の圧倒的なスケールに相対化され、時間の流れさえも日常とは異なる形で感じられます。フェア島では、孤立した島ゆえに共同体として生きる知恵が育まれてきました。荒野の只中にあるカラー駅は、映画『トレインスポッティング』では象徴的なシーンに登場したことで知られています。
スイルヴェンやセント・キルダでは、人が去った後に残された風景が、ハイランド・クリアランスや全島避難といった歴史を、言葉以上に雄弁に物語り、歴史の痕跡を今に伝える存在でもあります。特にセント・キルダは、極限環境の中で成立した平等な共同体と、その終焉を通じて、多くの問いを私たちに投げかけてきます。これらの場所を撮るという行為は、風景を消費することではなく、静かに対峙し、耳を澄ますことのように感じられます。

スコットランドの秘境は、単に遠さや不便さの象徴ではなく、歴史の痕跡であり、そして人間の生き方や社会のあり方を映し出す鏡でもあり、風景そのものが語りかけてくる思想の場でもあるように思えました。
ご来場の皆様におかれましては、ご清聴頂き誠にありがとうございました。