横山正子オルガンコンサート

JSS後援事業の一つとして、2025年5月17日(土)午後、上記コンサートが東京都目黒区の日本聖公会・聖パウロ教会で開催されました。
あいにくの雨の中でしたが、コンサート会場の静かな教会堂の白いパイプオルガンの前には多くの人が集まり、静かに演奏が始まるのを待っていました。
オルガニストであり音楽の研究者である横山正子さんによるこの演奏会、プログラムの前半はルネサンスをテーマに、20世紀になってスコットランドで発見されたという鍵盤楽譜の写本からの演奏、プログラム後半は現代のスコットランドの作曲家の曲が披露されました。演奏に先立って、横山さんの詳しい解説も興味深く、続く演奏は広い会堂に深く響きわたるオルガンの音色、美しいソプラノの歌声、優雅なリコーダーの音色が心地よく、貴重なスコットランドに由来する音楽を聴くことができる幸運な機会に恵まれた、豊かなひとときでした。

『横山正子オルガンコンサート』プログラム
-スコットランド鍵盤音楽の流れ、ルネサンスから現代まで-
オルガン演奏:横山正子さん
共演:ソプラノ・佐藤裕希恵さん、リコーダー・福岡ゆきさん
第一部……ルネサンス(16世紀)悲劇の女王メアリーと鍵盤音楽
(プログラムより抜粋)
16世紀ヨーロッパはルネサンス音楽が花開いた時代、ブリテン島のイングランドでもエリザベス一世のもと、教会や宮廷で声楽や器楽の傑作が生み出されました。一方、北のスコットランドでは厳しい宗教改革の嵐が吹き荒れ、教会や宮廷音楽にとっては冬の時代であり、スコットランドでは鍵盤楽器の楽譜など作られていなかったと考えられていました。しかし、1938年になって、スコットランド北部にある古い邸宅の図書館から、スコットランドに由来する鍵盤音楽の楽譜が大量に発見され、その後1949年にも再びいくつかの写本が見つかりました。16世紀後半、スコットランドは女王メアリーをいただく独立国家でした。不安定な政情の中、英国に逃れたメアリーは処刑されてしまいましたが、この悲劇の女王メアリーは幼少期から19歳までフランス王子の婚約者としてフランス宮廷文化の中で育ち、利発で勉強熱心で、音楽にも才能をあらわし、歌唱や様々な楽器演奏に長けていたと言われています。20世紀になって発見された楽譜や写本は、鍵盤音楽にも堪能であったメアリーとその周囲の音楽家の活動について新たな歴史的事実を語ってくれています。
演奏:
スコットランドの古い邸宅で発見された謎多きルネサンス鍵盤写本より
●《ダンカン・バーネットの音楽帳》よりスコットランドの作曲家の作品
・W.キンロッホ〈キンロッホ 彼のファンタジー〉
・E.ジョンソン?〈パヴァンとガリアード「ジョンストンの喜び」〉
・D.バーネット?〈パヴァン〉
●《クレメント・マチェットの音楽帳》よりイングランドの作曲家の作品
・W.バード〈 御者は口笛を吹いて〉
・J.ダウランド〈 蛙のガリアード〉
●ダウランドのリュートソング〈流れよ、我が涙〉〈おいで、もう一度〉
第二部
(プログラムより抜粋)
20世紀に入り、スコットランドの芸術は大きく蘇ります、音楽、美術、建築など、様々な分野が活気づき、優れた芸術家を輩出するようになり、教育機関もエディンバラ、グラスゴーを中心に、世界的レべルの展開を見せていきます。
エディンバラ大学で作曲を教えたケネス・レイトン、彼の作品は現代的でありながらロマン派的な美しさを備え、多くの人々の心をつかみました。20世紀スコットランドの芸術音楽を牽引した一人と言えます。
ジェイムス・マクミランはスコットランド生まれで、エディンバラ大学でレイトンに師事しました。ダラム大学で博士号を取り、現在はグラスゴーに在住。現代英国で最も成功している作曲家の一人です。エリザベス二世の国葬では彼の合唱作品が演奏されました。マクミランは交響曲、宗教曲、オルガン曲など多岐にわたる作品を書いていいますが、その作品の根底には、常に故郷スコットランドの民謡の旋律があると言えます。
演奏:
スコットランドゆかりの現代音楽家の作品
・K.レイトン《ファンファーレ》
・J.マクミラン《スコットランド語による三つの歌》
1.スコットランドの歌 2.バラッド 3. 子供たち
・K.レイトン《「ほめまつれ、みかみをば」によるトッカータ》
・M.コルブ/U .レーヴァ、J.カジック編曲《ハイランドの大聖堂》
最後の曲、バグパイプで聴き慣れていた、Highland Cathedralのオルガン演奏がとても新鮮でした。