映画『おくびょう鳥が歌うほうへ』
『スコットランド便り』122号 Orkney Nowのコラムでジョンストン・由香さんが紹介していた映画
『おくびょう鳥が歌うほうへ』が、いよいよ日本で上映されます。
ロンドンの大学院で生物学を学んでいた、29歳のロナ(主人公)は10年ぶりにスコットランドのオークニー諸島の故郷へと帰ってくる。都会の喧騒の中で自分を見失い、お酒に逃げる日々を送っていた生活からようやく抜け出したが、恋人との亀裂、数々のトラブルの記憶の断片が彼女を悩ませ続ける……。冷たい海と荒れ狂う風、オークニーの大自然の中で暮らし少しずつ自分を取り戻していく。
原作は作家エイミー・リプロットのベストセラー回想録『THE OUTRUN』。この"outrun"という意味は、単なる英語の「~より早く走る」「~を振り切る」という意味とは異なる、より土地と密接な関係を持つ意味がある。オークニーやシェットランド諸島の農業における方言で「農場を囲む放牧地」「農地の外周部」を意味するという。主人公のロナの実家の周囲に広がる土地が、物語の舞台そのものを指している。「物理的な"農場の外縁"」と比喩的な「自分自身から逃れたいという衝動」、そして「過去の自分を乗り越える再生の旅」という意味を重ね持っている。ロナがたどり着くその風景は、彼女が過去を引き受け、未来へと歩み出すための静かな出発点でもある。
この映画は単なるアルコール依存の記録ではなく、「再生と癒しの物語」である。
主人公ロナの変化していく髪の色は、彼女の心の動きを象徴している。オークニーの美しい自然の映像も見もの。




