スコッツマンを読む会 2025年11月
1)2025年7月5日付
Menace or misunderstood? The battle over Scotland’s seagulls, as tales of “brazen” attacks grow
「厄介者か誤解か?スコットランドのカモメを巡るバトル、大胆極まりない攻撃の話が大きくなるにつれ」
自然の生息環境を圧迫されて、カモメ達は都市部に追いやられて摩擦を生んでいる。
カモメは人間生活に対する厄介者であり脅威であるとして非難されており、住民が周囲を囲まれたり子供が血を流して取り残されているといった気がかりな話が出てきている。
カモメには大いに責任を取ってもらわなければならなそうだが、複数のスコットランド議会議員が行動を起こそうと決意している。
スコットランド民族党所属の"農業及び接続性”担当大臣・ジム・フェアリー氏は今年後半にインヴァネスで“カモメサミット”を開催すると発表した。更にスコットランド保守党(英・保守党スコットランド支部)前代表ダグラス・ロス氏はスコットランド議会でカモメの制御に関して討議をした。
彼が取り上げた事例の一つがエルギンの女性に関する「ひどい話」で、「カモメの攻撃の結果脚を骨折して病院に駆け込み、病院を出たらまた攻撃された」のだ。
その他の場所だと、彼の話によると(エルギンの南西2.4kmの)ミルトンダフ近くの高齢の女性がカモメの急降下攻撃にあった結果、敷地内の巣を取り除くのに年間2,000ポンド(¥399,000)を出費しなければならなかった。ロス氏は「死亡者が出る前に」行動を起こすよう求めた。
小紙に答えて、ハイランド・アンド・アイランド選挙区選出のスコットランド議会議員(のロス氏)はカモメがより「大胆極まりなく」と語った。更に「カモメは特に都市部で増加している模様であり、攻撃はより凶暴になっているようだ」とつけ加えた。
ロス氏の(保守党の)同僚であるクレッグ・ホイ氏は、(スコティッシュ・ボーダーズ,ベリックシャーの)アイマスのとある企業の外ではひと月の内に7人の子供が攻撃され、「頭に傷を負って顔から血を流していた」と語った。
アバディーンはしばしばスコットランドの“カモメのホットスポット”として言いはやされてきたが、住民に恐怖をもたらす"XLガリーズ(特大カモメども)"の報告もある。保守党議員のマイケル・クズニアは、カモメを分散させる或いは移動させることに適応できる法的保護を求めている。
彼は花崗岩都市(※)のカモメを“狂暴生物”と表現し、こう付け加える「カモメが極めて過度の保護を受けているという状況に我々はあって、その数を抑制することがより容易になるよう検討していくべきである」
しかし他の人々は、カモメ(カモメ科の数種の生物の口語名)は誤解されていて事実を曲げて伝えられており、一方その数は実は急激に減っていると主張している。
「迷惑なもの、厄介者といった言葉は実にためにならない、ある種不正確なものであると思います。つまりそうした言葉遣いがもたらすのは、カモメはいささかの悪意を持って行動し我々人間を攻撃しようとうろついているのだというこうした認識を産み出して強めるということなのだ」”動物福祉慈善団体ワン・カインドの政策理事であるカースティ・ジェンキンスは小紙に語った。
「カモメが私達の町に移り住むことになってしまった理由とは、自然の営巣地と食糧源がより乏しくなってきていること、そしてその第一の原因は人間の行動にあるのです。カモメには知性がありとても機知に富んでいますから,(従来の営巣地の)代わりに都市に住むよう適応することを学んでいるのです。そしてそこ(=都市)で彼らが見つけたのが安全な営巣地と豊富な食糧源だったのです」
英国王立鳥類保護協会スコットランド、生息地及び生物種主任のポール・ワトソン氏は、カモメに対する非致死性の方法が「真に効果がある」と語った。
同氏は「都市部で見られるカモメ類は世界的に重要なスコットランドの海鳥の個体群のほとんど全てがそうであるように、全国的にそうであるように激減している」と語り、更に「街中ではカモメは屋根を捕食者のいない営巣地であると認識して路上には豊富な食料を見つけるが、そうした食料は主に彼らにとって入手可能な残飯だ。非致死性の方法が真に効果的であろう。つまり春の繁殖期が始まる前に、屋根にワイヤーのようなデバイスを取り付けて巣作りを妨げたり、路上に残飯を残さないようにすることで私達は争いの起きている地域の対立をやわらげてこれらの野生鳥類とともに生活することを学ぶことができる」と続けた。
ジェンキンス氏は、弱い立場の人々が直面している危険性認識する必要性はあるが、非致死的解決法についても指摘する。
「事実に反して無理に物事を単純化しようとはしていません」と彼女は語る。「ことは複雑だと思います。しかし私はただカモメを非難するばかりで『全部殺してしまえ』と言うよりも、きちんと吟味して解決策を見つけようとすることだと思います」
巣や卵を壊してひなを殺す免許を発行することのできるネイチャースコットは、カモメの保護と(地域の)保安への懸念のバランスを取る義務が自らにはあると述べる。
しかしロス氏はこの特殊法人を強く批判している。
「特にネイチャースコットなんぞはお笑い草ですよ。つまり、彼らが近年この問題にアプローチしているやり方はばかげているんです」と小紙に語った。
「例えば、各企業にこうしたカモメによる急降下攻撃から自らを守るために(道を歩く)買い物客に雨傘を提供するように伝える(=求める)のは無論常識的でもなければ信頼に足るものでもありませんが、それがスコットランド政府の特殊法人によって発せられた本物のアドバイスなんですよ」
彼はその特殊法人とは"巨大な”利益相反があると言った。「彼らは鳥の数を守り鳥類を保全するよう政府に委ねられている一方、この鳥(=カモメ)の数を制御する免許申請の裁定機関でもあります。そして、一つの組織でこの双方を行うのは可能ではありません」と彼は語った。
ロス氏はインヴァネスで開催されることになっているサミットが公開され、独立した人物が議長を務めるよう求めている。スコットランド政府は(会議の)計画の最終決定はしていないと語った。
ネイチャースコットのある広報担当者は自らの責任を“非常に重く”受け止めており、関連法令及びスコットランド規制当局戦略的実施規則(SRSCP)に即して実行すると述べ、全ての免許付与は法律に則っていることを確約している。
彼女は「我々はカモメが時折我々の市や町で問題を起こす可能性があることは理解しています。同時に、カモメの個体数は大幅な減少に直面している。ネイチャースコットには、保安に関する懸念とカモメ保護の間でバランスを取る義務がある」と述べている。
更に「長期的には、我々はカモメや他の野生生物と共存する必要がある。それには(他団体との)共同行動が必要で、我々は議会における議論を歓迎する。またカギとなるパートナー達を呼び集めてのサミットに大臣が総力を挙げることも歓迎する」
「我々は、将来複数団体の協力によるカモメ管理計画が導入されることを確約してくれるような地元当局と共に働き続ける。更にかかる計画は効果的(カモメ鳥害)防止政策,抑止手段並びに行動と指導内容の変化を伴うものであることをも確約されるものとする」とも述べた。
(※)花崗岩都市
アバディーンの別名地元で産出する花崗岩を使用した重厚な街並みが特徴的なことから。






