◆Zoom スコットランドを語る会 活動報告 2023年◆
スコットランドの道路とラウンドアバウトについて
「スコットランドの道路とラウンドアバウトについて」
太田広
本日は「スコットランドを語る会」でお話しする機会をいただき、大変ありがとうございます。
まず、自己紹介します。国土交通省で公園緑地行政などに携わり、2001年から在エディンバラ総領事館に領事(広報・文化担当)として赴任しました。日本スコットランド協会との出会いもこの時です。2010年からは国立研究開発法人土木研究所で道路の景観や緑化などに関する研究に従事、2012年にスコットランドの緑地保全などをテーマに論文をまとめ、博士(工学)の学位を授与されました。博士論文については長くなりますのでまた別の機会に譲ります。

さて昨年、土木研究所を退職して、時間ができましたので、まだコロナ禍の影響が残る中、約10年ぶりにスコットランドを再訪しました。この訪問について、写真で少し紹介したいと思います。
パリ、ロンドン、リバプールについては、時間の関係で詳しくは割愛しますが、初めて、ユーロスター、鉄道でスコットランドに入りました。グラスゴーでは、2014年に焼失しグラスゴー美術学校のマッキントッシュ棟の再建工事が行われていました。フォート・ウィリアムからマレイグまで観光SL列車「ジャコバイト号」に乗るため、ローカル線でさら北上し、映画「ハリーポッター」のシーンにも出てくるグレンフィナン高架橋を渡りました。旅行の最後に5泊したエディンバラでは、昔住んでいたニュータウンのフラット、近所のパブ、よく散策した植物園、19世紀に建てられた建築物が美しい博物館、総領事館の元同僚たちとの再会、バスツアーで訪れたアバフェルディー蒸留所での樽出し原酒の試飲などの写真を紹介しました。
パリの電車でスリにあったり、ユーロスターに乗り遅れそうになったり、新型コロナ・ウイルスの陰性証明を取得したのに、エディンバラからパリ経由の飛行機が1日遅れたり、とトラブルもありましたが、懐かしく楽しい旅行でした。
次に、今日のテーマ「スコットランドの道路とラウンドアバウトについて」お話しします。
はじめに、ラウンドアバウト(環状交差点)の仕組みを説明します。原則として「環道優先」の交差点で、信号不要で交通安全性が高い交差点です。筆者は英国で3年間運転しましたが、最も注意しなければならないのは環道への合流時だけで、基本的に一旦停止不要で、慣れるととてもスムーズに通行できる、優れた交差点だと思います。
ラウンドアバウトは1980年代以降、英国、フランスなど諸外国では広く設置されていますが、日本では2014年の道路交通法改正により、新たな交差構造として環状交差点が定められました。警察庁によると、2023年3 月末時点で、全国155 箇所に導入されています。
著者を含む、土木研究所の研究グループでは、これまで国内外のラウンドアバウトの実態調査を行ってきました。今日は、調査結果の一部を紹介するとともに、エディンバラ市内のラウンドアバウトの画像を中心に見ていきたいと思います。
まず、筆者らは、ラウンドアバウト先進国で、ラウンドアバウトの設置数の多い英国、フランス、スペインから各国1都市(エディンバラ、マルセイユ、マラガ)を選び、オンライン地図ソフトを用いて、ラウンドアバウトの調査を行いました。 調査したラウンドアバウト535箇所では、各都市とも60%以上のラウンドアバウト中央島が樹木などで修景緑化されていることや、中央島の直径が20m以上のラウンドアバウトでは80%以上が修景緑化され、直径が大きいほど、多様なランドスケープが整備されていることがわかりました。
英国のラウンドアバウトは、比較的質素なデザインですが、欧州各都市のラウンドアバウトを見てわかる通り、特色ある景観が整備されたラウンドアバウトが地域や拠点のランドマーク(目印)として活用されている事例が多くみられました。また、高速道路のインターチェンジや都市郊外の環状道路から市街地へのアクセスとなる交差点など、道路の階層区分が変化する交通結節点、住宅地入口など交通環境が変化する位置などに設置されていることがわかります。
拠点や地域のランドマーク機能やゲート機能を有効に発揮させるともに、道路ネットワークの結節点や交通環境の変化をドライバーに認識させ、住宅地や歴史的環境などの交通静穏化も期待できると思います。
また、日本でも特に交通量が比較的少ない地域に向いており、例えば、北海道などで地域のランドマークとなるような大型のラウンドアバウトの整備が進むことを期待しています。

参考文献:
太田広、榎本碧、松田泰明:海外におけるラウンドアバウト緑化の特徴:ランドスケープ研究 Vol. 84 技術報告集No.11, 94-99, 2021.

Home
Copyright 2002 The Japan-Scotland Society All right reserved ©